歯並びが悪くなる理由
あごの骨の形や歯の大きさ、日常生活の癖などが原因です
歯並びや噛み合わせに問題があることを「不正咬合(ふせいこうごう)」と言います。原因は大きく分けて2つです。一つは骨格に基因するもので、主にあごの骨格の形(前後的な関係)によって「受け口」などの問題が起きます。二つめは、歯の萌出の位置が原因で、歯が生えてくる角度や歯の大きさによって「出っ歯」や「すきっ歯」などの歯槽的な問題が起きます。このほかにも舌のくせや日常生活における様々な癖が原因になり得ます。原因は一つではなく、複合的に重なり合っていることが多いです。
歯並びが悪いと、どんな問題が起きるの?
さまざまな問題が起こる可能性が高まります
- 食べものがしっかりと噛めない→胃や腸など消化器に負担がかかります。
- 歯磨きがしにくい→磨き残しの部分が、むし歯や歯周病の温床となります。
- 発音に影響する→発音しにくい音があるなど、発音に問題が出てきます。
- 顔のつくりに影響する→精神的なコンプレックスになることもあります。
- 社会的評価に影響する→外見の印象が就職や社会での評価に影響するおそれがあります。
お子様の歯並びをチェックしましょう
お子様に不正咬合があるかどうか、不正咬合が起きる可能性があるかどうかを知るためには、実際に小児歯科に行って歯科医師に診てもらうことが確実です。
ただ、その前に家でわかることもありますので、次のことを参考にしてみてください。当てはまることがあれば、できるだけ早い受診をおすすめします。
- 受け口になっていませんか?
- すきっ歯になっていませんか?
- お子様の発音は大丈夫ですか?
- 指しゃぶりや頬杖、歯ぎしりなどの良くない癖はありませんか?
- 出っ歯になっていませんか?
- 舌の異常を指摘されたことはありませんか?
- ご両親に不正咬合はありませんか?
- 抜けた乳歯・欠けた乳歯はありませんか?
「受け口」になっていませんか?
早期に治療を始めた方が良い不正咬合の代表例です
「受け口」とは、上下の歯を噛み合わせたときに、下の歯が上の歯よりも前に出ている状態を言います。
日本人には多いタイプの不正咬合で、お子様の不正咬合のなかでも早期に治療を始めた方が良いものの代表です。なぜなら受け口は、あごの骨格の成長に深く関わっているからです。
成人になってからだと、受け口を治すには、手術を伴う大掛かりな矯正治療になってしまうこともあります。
しかしお子様の場合は、あごの骨格の発育が成長過程の途中ですので、成人に比べて治療がしやすいのです。
対象年齢:3歳から
「出っ歯」になっていませんか?
日常生活の癖も原因になり得ます
「出っ歯」とは、上の前歯が前方に突出している状態を言います。
先天的に歯が大きいお子様や歯列弓が小さいお子様は出っ歯になりやすいです。また、指しゃぶりや下唇を噛む、口呼吸をするといった小児期の癖から出っ歯になることもあります。
また、転んだり、ぶつけたりする外傷により、前歯がゆれて痛みが続いたり、折ったりする危険性が高くなります。
そのようなお子様には、歯列弓を広げる装置などを使って治療を行い、それと平行して癖の改善を促していきます。
対象年齢:5~6歳から/よく使われる装置の例:マイオブレス、インビザラインファースト・インビザライン、マルチブラケットなど
「すきっ歯」になっていませんか?
「すきっ歯」とは、歯と歯の間にすきまができている状態です。歯全体にすきまがある場合と、部分的な場合とがあります。
-
乳歯のすきっ歯など問題のないケースもあります
小児歯科にはよくこの「すきっ歯」の相談がありますが、多くの場合あまり心配する必要のないケースが多いでしょう。
たとえば乳歯が「すきっ歯」になっているのであれば、問題のないことがほとんどです。この後に乳歯よりも大きい永久歯が生えてくるわけですから、スペース的なゆとりがあったほうが、むしろ良いのです。
永久歯の上の前歯が、「ハ」の字型に開いて出てきたという相談もよくあります。これもたいていは心配いりません。その脇にある歯が次々に大きな永久歯に生え変わっていけば、すき間がそれらに押されて自然に閉じてくるからです。
-
上唇小帯の付帯異常や過剰歯について
すきっ歯になる原因はさまざまですが、そのうちの一つとして、「上唇小帯」(じょうしんしょうたい)の付帯異常や「正中埋伏過剰歯」(せいちゅうまいくふかじょうし)などが考えられます。
上唇小帯というのは、上唇と歯茎をつなぐ筋の部分のことです。この筋が上の前歯2本の間まで伸びている状態が上唇小帯の付帯異常で、これが起きると、上の前歯がいわゆる「すきっ歯」になってしまいます。上の前歯が「ハ」の字型に生えてくるのはよくあることですが、ふつうは自然に閉じていきます。しかし上唇小帯の付帯異常があると、いつまでも閉じないケースが多く認められます。
過剰歯については永久歯の萌出をさまたげたり、萌出位置の異常を引き起こすことがあるため、摘出する必要があります。
永久歯が並びきった時点ですきっ歯があるのは、矯正治療の対象となりえます。並びきる前に、早めに受診することをお勧めします。
舌の異常を指摘されたことはありませんか?
お子様の舌の小帯の異常が、不正咬合の原因になる場合もあります。
たとえば次のような症状があります。
舌小帯強直/舌小帯付着異常
「舌小帯」というのは、舌の裏側の真ん中から口の底にのびている筋のことです。これが先天的に短いのが「舌小帯短縮症」で、哺乳や食事、発音など、さまざまな面にマイナスの影響が出ます。舌がつねに下の前歯を押している状態になりやすいので、下の前歯が前方に傾斜してしまうこともあります。
以上のような舌の形の異常は、検診などのときに指摘されることがあります。舌の改善だけでなく、不正咬合の観点からも、注意して見てあげてください。
お子様の発音は大丈夫ですか?
不正咬合がお子様の発音に影響することは少なくありません。逆に言うと、お子様の発音に気になることがあれば、不正咬合が原因となっている可能性があります。
小さなお子様は、正しく発音できない音があったり、舌足らずであったりするものですが、発音の完成期と言われる6歳から7歳になっても発音に問題が残るようなら、念のため一度受診することをお勧めします。
当院では、MFT(筋機能訓練)も行っており、舌の訓練や発音の訓練などを行っています。
綺麗な発音は大切なことですし、素敵なものです。
ご両親に不正咬合はありませんか?
不正咬合は遺伝が大きく関わります。骨格の形や、歯の生え方は遺伝する場合があるからです。
お子様の歯並びや噛み合わせに問題がないように思えても、ご両親のどちらかに不正咬合や矯正歴があるなら、お子様が小さいうちに一度受診されることをお勧めします。
こんな癖はありませんか?
-
日常生活における癖が不正咬合の原因になる場合もあります。
指しゃぶり
指しゃぶりは出っ歯や歯列弓の狭窄などの原因となるため、1歳から2歳半ぐらいまでに止めさせたいものです。
各学会の共通見解は、2歳半までに止めれば歯並びに影響を与えないとしています。おしゃぶりについても同様です。
-
下唇を噛む
緊張したときや悔しがっているときに、下唇を噛む癖があるお子様がいます。このときに下唇といっしょに下の前歯は舌側に押し倒され、また逆に上の前歯が上唇の弾力によりぐっと押し出されるので、これが癖になると出っ歯の原因にもなります。
-
頬杖をつく
読書や宿題をしているとき、またはテレビを見ているときに、お子様がいつも頬杖をついてはいないでしょうか。
頬杖もまた、出っ歯などの不正咬合の原因になりえます。歯列が押し出されて前歯が出てきたり、歯列弓の型が左右非対称となって歯が綺麗に並びきらなかったりします。
頭の重さはおよそボーリングの球1個分の重さがあり、これを支えるという事は歯列にかなり力が加わります。この力により歯列の乱れが生じます。 -
歯ぎしりをする
歯ぎしりの主な原因は精神的なストレスが多いと言われています。ただ、上下の歯の噛み合わせの悪さから来る歯ぎしりもあります。
お子様の歯ぎしりが気になる場合は、小児歯科で噛み合わせをチェックしてもらうといいでしょう。ただし、成長発育期であるお子様は、あごも成長しているため一過性の事が多いでしょう。
抜けた乳歯、欠けた乳歯はありませんか?
永久歯が乱れて生える可能性があります
乳歯から永久歯に生え変わる時期を変換期といいます。しかしさまざまな原因により、その前に乳歯を失ってしまうケースがあります。
「乳歯がむし歯になって抜けてしまった」「治療で抜いてしまった」「転んだときに歯が欠けてしまった」
こういった状況を放置していると、永久歯が乱れて生えてくる可能性があるので、小児歯科医に相談してみましょう。永久歯の乱れを防ぐためには、乳歯が抜けた(抜いた)後に「保隙(ほげき)」という処置をする必要があります。